日本男子団体組手はなんと1975年の第3回世界選手権以来の決勝進出。優勝すれば1970年の第1回選手権以来の世界一となる。相手は前回2014年大会で優勝した世界王者:イラン。言わずと知れた超強豪国だ。ここまで、フランス、アゼルバイジャンと言った世界トップチームを相手に横綱相撲をみせてきた。さらに個人組手金2つ銅2つという、相手にとって不足なし。昨年のアジア大会ではほぼ同じメンバーに日本が競り勝って優勝していることも期待を高めた。
まず先鋒戦は西村拳。先月のジャーマンオープンで空手界のレジェンド、アゼルバイジャンのアガイエフに勝っていこう、絶好調の強さを見せる。この西村を相手に、イランは間合いを広くキープするディフェンスの組手。残り13秒まで上手く外されポイントを取れない西村が、相手の急に転じた刻み突きを被弾。そのまま時間切れでまずイランが1-0で1勝をあげる。
続く次鋒はエース荒賀龍太郎。世界チャンピオンの風格でステージに上がったが、序盤30秒で刻みを取られる。しかし、詰将棋のように、相手の動きを制限していく。この対応力の高さと柔軟性が、荒賀の真骨頂。ついに1:30秒で上段蹴りを届かせる。残り30秒でさらに上段蹴り。これで6-1となり、会場からは期待に満ちた歓声があがる。続けて突きでポイントをとり7-1で日本が1勝を取り返す。
貴重な一勝をもたらした香川
中堅は香川幸允。相手は過去幾度も対戦しながら一敗しかしていない、今大会+84kgで世界王者となったサジェット。毎回刻みの差し合いとなる二人の戦いは、今回も壮絶な打ち合いとなった。最初の交錯は開始30秒。やはり刻みの差し合いとなり両方に1ポイント。次に先に攻めた香川にカウンターを合わせたサジェットが加点。直ぐに香川が取り返すも、負けじとサジェットも取り返し、1分経過で香川2-3サジェット。
ここまで先を取った香川だが、ここから作戦を待ちに変更。相手の刻みを寸前で見切り、上段を返す。これが見事に入り、結果的に6-4で貴重な2勝目を日本に献上。
2勝1敗で向かえた副将戦の日本は吏毅哉。イランは中堅、副将、大将にポイントゲッターを置いており、ここが一つの大きな勝負所となった。飯村と比べてもかなり大型なイランは、刻みと裏回しを武器に大量得点。8点差をつけられ飯村が敗退となった。
いよいよ運命の大将戦。日本は守りの要、篠原浩人。世界でもベスト3に入るディフェンス力を誇る篠原だが、得失点差では引き分けでは負けてしまう戦い。相手は-84kgで荒賀龍太郎と幾度と死闘を繰り広げたイランのエース・ザビオラ。大きなプレッシャーのなか、しかし篠原は非常に冷静だった。
1分過ぎに相手の出鼻に得意のカウンターを当てる。さらにもう一度カウンター。2-0と引き離す。さすが銘打てのカウンター使い。世界で体格差が大きい選手に対しても戦いの組み立てが十分に通用することを証明する。
紙一重の勝負となった大将戦
しかし、相手はあくまでザビオラ。この場面で篠原に上段蹴りを届かせ、2-3。すぐに篠原が気持ちを込めた中段蹴りからの突きで3-3とする。小さい篠原が大きなザビオラに善戦する様子に会場全体が篠原の応援を始める。また中段蹴りから上段突きの連続技を使い、これが入ったかのように見えたが旗わ上がらず。樋口コーチがビデオリプレイを要求するもNOとなった。
残り35秒。ここでお互いが執念の上段突き。旗は割れ、二人にポイントが入り4-4。このまま引き分けても日本は負けてしまう。積極的に仕掛けた篠原だが、残り9秒。攻撃が交錯した紙一重の所で、相手にポイントが入ってしまった。
まさに紙一重の勝負に敗退した日本であったが、チーム力の高さを世界に見せつけた歴史的な銀メダル獲得となった。